卒論 Tips8 仮説構築力を試す
仮説の構築力について
卒業論文のテーマを大まかに設定し取り組む際に、早い段階でどのような研究を行うのか?
どのように持論を展開・証明するのか?
取り組み方法と説明ロジックについて、論文のストーリーを設定してみる事をお勧めしたい。
その分野について、ある程度の土地勘がつくようであれば、大胆に論文の展開について仮説を立ててみよう。
この仮説構築力を鍛えることが、卒論の設計及び今後色々な場面でも役立つと思われる。
事例をもとに説明をしてゆくので簡単なドリルだと思って読み進めていってほしい。
まず、あなたは法学部の学生だと仮定して例題を出し、解説してみよう。
例えば、最近何かと話題に上る”少年法”について関心をもち、これについて卒論で取り上げてみたいと思ったとする。
特に、日本の少年法の妥当性について疑問をもち、これをテーマに設定した。
さて、あなたならどのような展開でこれを進めていこうとするだろうか?
テーマを設定するかしないかの段階で、大胆にストーリーについて仮説を立ててみるのだ。もちろん間違っていてもよい。(参照 ↓)
仮説構築の例
- 日本の少年法とは・・・ このようなものである
- 問題提起:これはおかしいのではないか?
- 問題提起の背景の説明(事例の列挙等)
- 諸外国の少年法を調べると・・・である。
- 諸外国の少年法の背景にある考えは・・・である。
- この背景にある考え方は、日本では従来馴染みにくかった。
- 馴染みにくかった理由は・・・である。
- だが、最近の日本事情も変化してきた。理由にあがった時代認識について最近の日本の事情を調べると・・・である。
- 背景事情が日本も諸外国と同等になってきている。
- よって、諸外国で採用されている考え方に基づき日本でも・・・のように法解釈を見直してよいのではないだろうか
- 尚、その時の問題・課題として・・・がある。
このように、問題設定と、それをどのようなロジックで説明してゆくのか、仮説的に決めてしまうのだ。
そして、これに合うように調査を加えてストーリーに肉付けしてゆけば卒論研究は早い。
但し、本当かどうかわからず決め打ちした仮説なので調べてみると、ストーリーに修正が必要なこともある。
そうなったら、修正が必要なところまで戻って、そこから先について、また新たな仮説を練り直してみればよいのだ。
例えば、ストーリー途中の”背景事情が日本も諸外国と同等に・・・”という所が証明されなければ、そこから先のストーリーを考え直し、新たな仮説をたてて(例えば以下)また進むのである。
- 諸外国の考え方は5パターンに分類可能
- その5つは文化成熟度順に並べて考えることが可能
- 日本の少年法は第二ステップにあるといえる。
- しかし、文化成熟度を見ると第三ステップまできている。
- だから、第三のパターンを検討してみてもよいのではないだろうか
- ・・・
では、次に、あなたが文学部の学生になったとして、仮説構築力を試してみよう。
”夏目漱石の書は、実は女性作家による著作ではないか?”と大胆な仮説をたてて、取り組んだとしよう。
どのような論点を展開すれば、説得力のある論文になるだろうか?
仮説の構築力ドリル
どのような仮説を考えただろうか?仮説構築力とは、想像力に近いものでもある。但し、それだけではない。全く奇想天外ではいけない。
かつ、論理的な展開ロジックになっていないといけない。
- 想像力(思考を前に進める力)
- 同分野へのある程度の知識
- 論理的なロジック展開力
以上の三つを兼ね備えて仮説を構築してしまえば、あとが楽である。
今回の例題自体は少々奇天烈なものだったかもしれないが、例えば右のようなものが、仮説構築の例として提示可能である。(参照 ↓)
仮説構築の例
- 当時の女性著作品と男性著作品の特徴は・・である
- 比較対象として同時代の男女作家**名の作品をとりあげる。
- 女性著作品の特徴である言い回し・表現の代表的なもの5つの出現頻度について調査した
- 同時代の男性作家10名の著作品の1000頁あたりの出現数は**、女性作家10名の著作品の出現数は++である。
- 一方、夏目漱石の著作品の出現数は+*である。統計的検定の結果、p<0.05で夏目漱石は女性作家と同じ頻度帯に属している。
- ダカラ、夏目漱石の著作品の文体から見ると、女性作家の特徴に非常に近いといえる。
最後にもうひとつ例題を、今度は経済学部の学生になったと仮定して、今流行の”IT(インフォメーション・テクノロジー)革命”について興味を持ったアナタは”IT革命がもたらす雇用構造の変化”について検討してみようと考えた。
さて、どのような切り口でどのようなストーリー(仮説)を描く(構築する)だろうか?
(→例示は次項”プロの論文を見よう”にて紹介)
*尚、ここで紹介した、いずれの仮説構築例も、学問的裏付けの無いフィクションとして書いたものであることを断っておく。